■ 子宮動脈塞栓術(UAE)の具体的なご説明
血管カテーテルを用いて子宮動脈を塞栓し、子宮からの出血を止める方法です。この治療自体は、自然分娩後・帝王切開後・子宮外妊娠・手術後などの止血や、子宮の血管奇形(AVM)の治療のために1970年代から行われてきました。
UAEを子宮筋腫の治療として行ったのは、フランスの産婦人科医Ravinaが最初で、1995年にランセットという学術雑誌で報告しました。
● 子宮動脈をふさぐと筋腫の治療ができる理由
筋腫は、主として子宮動脈という血管から血液を供給されていますが、この「栄養の供給路」を、0.5〜1ミリ程度に細かく切り刻んだ医療用ゼラチンスポンジでふさいで、兵糧攻めにします。
このゼラチンスポンジは筋腫の中を流れる細い動脈内に停滞します。そこで形成された血栓と一体となったゼラチンスポンジ細片は、徐々に体内に吸収されていき、およそ1〜2週間で動脈はほぼ完全に再開通します。
子宮筋腫は、栄養血管が閉塞されると少なくとも1日以内には不可逆的な梗塞に陥ります。このため子宮動脈がたとえ数日後に再開通しても、梗塞に陥った筋腫が生き返ることはありません。
● UAEの実際
通常、UAE前後のフォローアップや入院は産婦人科で受けて頂きます。
事前に放射線科医の診察も受けて頂いた上で、UAEそのものは、カテーテル操作に慣れた放射線科医が1階の放射線科血管造影室で行います。
● UAE
局所麻酔をした上で、右ふとももの付け根からカテーテルという直径2mm程度の細い管を入れ、両側の子宮動脈から塞栓物質(ゼラチンスポンジ)を注入します。子宮筋腫への血液供給が断たれることにより、子宮筋腫は壊死(えし)を起こし、数ヶ月から年単位の経過で縮小していきます。
UAEでは、お腹にX線を照射しているのは正味10分前後で、その他を含めて1時間程度で終わります。
● UAE直後
治療したら、カテーテルを抜いて病室に戻りますが、抜いた穴から出血します(動脈なので勢いよく出ます)ので、15分間ほど圧迫して止血した後、傷口の上におもしを乗せます。完全に出血が止まり、おもしを外して歩き回れるのは翌朝です。
術後6時間は病室のベッドで安静が必要ですが、6時間以降はベッドを起こしたり体を動かしたりできます。
※ 術後1日までは産婦人科医と放射線科医の両方がチームとして対応いたします。
現在、当院には産婦人科医3名と放射線科医2名が在籍し、チームを組んで治療にあたっています。
● UAEの長所と短所
---- 長所 -------
1. 入院期間が短い
2. 手術に比べ回復が早く、当院での平均在院日数は5日です。
3. 子宮が温存できる
4. 輸血を必要としない
→ 貧血があっても治療可能です。手術と違い、治療の際に輸血を必要とすることはありません。)
5. 大きなきずが残らない
→ 体のきずについては、血管カテーテル挿入部位(通常は右大腿の付け根)に5mm程の皮膚切開が
必要となるのみです。しかも皮膚のしわに沿って切開するので目立ちません。
6. 合併症が少ない
→ 一般に手術よりも、合併症を生じる頻度が少ないといわれています。
開腹手術と異なり、周囲臓器に癒着を生じることがありません。膀胱や尿管の損傷も起こしません。
7. 副作用が少ない
→ ホルモン療法では更年期障害に似た症状が出たり、薬物による副作用が出現することがありますが
UAEでは術直後に痛みが出ますが、鎮痛剤を使うことによってコントロールできます。
8. 筋腫の再発が少ない
→ 子宮筋腫核出術やホルモン療法と異なり、子宮動脈塞栓術(UAE)の場合には治療後5年間では
筋腫再発が見られなかったと報告されています。
----- 短所 --------
1. 治療効果が上がらない場合がある
→ 10〜15%で症状が改善せず、別の治療方法が必要となることがあります
(しかしこの治療を受けていたことが手術の邪魔になることは通常ありません)。
2. 病理検査ができない
→ 子宮筋腫を摘出しないため、良性か悪性かの病理検査(摘出した臓器を顕微鏡で調べるもの)が
できません。
当院ではUAE前に必ず造影MRI検査を行っています。
ほとんどの場合、MRI検査で子宮筋腫と悪性子宮腫瘍を区別することが可能です。
3. 費用が高い
→ 現在のところ健康保険の適応がないために、費用は全て自費負担となります。
術前検査費・治療費・入院費・薬剤費など合わせて
約45万円程度となります。
ただし民間の生命保険ではカテーテル手術として支払いの対象となるために、実質的には患者様
の負担はそう大きなものにはなりません
(加入されている生命保険によります)。
● UAEの副作用・合併症
◎ 比較的よくみられるもの
→ 下腹部痛 : UAE直後から約6〜12時間、下腹部の強い痛みが続きます。
その後、数日〜1週間程度は軽い痛みがあると言われています。
※ この副作用はほぼ100%の割合で見られるので、当院ではUAE直後に、「痛みがある」「ない」に関係
なく、 痛み止めの注射をします。
これによって痛みは軽く済みますし、痛みが出てから薬を使うよりも、薬の量を少なくすることができます。
※ 発熱や悪心、嘔吐 : ほとんどの場合は何もしなくても自然に治りますが、症状がひどい時は飲み薬
や坐薬で対応します。
◎ まれにみられるもの
1. 卵巣機能不全
→ UAEには数%で無月経が生じると報告されています。その大半は45歳以上の場合です。
無月経は多くの場合一過性ですが、1%程度で閉経になるといわれています。
なお、子宮全摘術の場合には、約15%で卵巣機能低下を生じると報告されています。
2. 重篤な感染
→ UAE後に、数%で感染を生じます。
術後の感染を防ぐため、治療前からあらかじめ抗生物質を服用していただきます。
このおかげでほとんどの場合は重い感染症を起こすことはありません。
膿瘍形成など、重度の感染のために子宮全摘術を必要とする頻度は0.4〜0.5%程度と云われ
ています。
3. その他
→ 局所麻酔薬・血管造影剤のアレルギー、カテーテル操作による血管損傷、カテーテル刺入部の
皮下血腫、術後の肺塞栓症などがごくまれに起こります。
頻度はいずれも稀ですが、万が一これらの合併症が起こった場合も、すぐに適切な処置が行える
ように準備をしています。
◎ 副作用等の質問と回答は
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