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『 医療被曝について 』
放射線科 三村文利
放射線被爆というと原爆、原発事故など恐ろしい響きがありますが、これらは一度に全身に被爆します。一方、医療被曝は部分的かつ分割被爆であり、人体に与える影響は、同じ量でも医療被曝の方がはるかに少なくなります。これは細胞や組織には放射線による損傷を修復する能力があるからです。エックス線被爆による影響にはある線量以上の放射線を受けないと起こらないもの(確定的影響)と受ける線量が少しでもあれば小さい確率ではあるが起こるとされるもの(確率的影響)があります。
確定的影響には白内障、不妊、胎児奇形などが、確率的影響にはがん、白血病、遺伝的影響などがあります。放射線の単位には吸収線量:Gy(グレイ)や実行線量:Sv(シーベルト)がありますが、ここでは吸収線量を用いて説明します。
確定的影響のしきい線量は臓器により異なりますが、影響の受けやすい水晶体が混濁するのに500から2.000mGy、精巣で永久不妊が3500から6000mGy,とされています。
一方、エックス線検査による線量はレントゲン写真1枚で胸部が0.15mGy、腹部が3mGy, 乳房が3mGyです。レントゲン撮影では人体への影響がほとんどないことがご理解いただけるかと思います。
CTにおいては20から50mGy(これは皮膚の浴びる線量です)とレントゲン撮影に比べるとかなりの高線量になります。Lancet(ランセット)という英国の医学雑誌に日本では放射線検査によってがんが、3.2%(年間7.587件)増える可能性があるとする論文が掲載され、朝日新聞、読売新聞などで取り上げられました。前に述べました、確率的影響を論じているわけです。
この論文にはいくつかの問題点や疑問点があり、50mGy程度での発がんの可能性もいまだ定説がないのも事実です。またCTを施行することによって得られる情報、つまり患者さんが得られる利益を軽視している点が挙げられます。CTによって救急患者さんの症状の原因を特定したり、病気の進行具合を把握したり、早期のがんを見つけたりとCTが医療に果たす役割は非常に大きいものがあります。
医療被曝の防護体系に“行為の正当性(JUSTIFICATION)”というものがあり、それには放射線を利用したいかなる行為も、その施行が患者にとってプラスの利益を生まなければならず、不必要な放射線被爆を与えてはならないとされており、改めてこのことを肝に銘じて、放射線業務に携わりたいと思っております。
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